質問:

PSCって何ですか?

 

ご回答:

PSCとは、Port State Control(ポートステートコントロール)の略称で、外国船舶への立入り検査のことをいいます。

また、検査を実施する検査官のことをPSCO(ポートステートコントロールオフィサー)と呼びます。日本のPSCOは国土交通省職員であり、他国においても、その国の職員が担っています。

 

では、何のために外国船舶への立入り検査をするのか、いつ、どのように検査をするのか解説していきます。

 

まず、何のために外国船舶への立入り検査をするのか。一言でいうと、サブスタンダード船を排除するためです。

外国航路に就航している外国船舶は、細かく定められている国際ルールに従って運航、荷役、船舶管理がなされていなくてはなりません。そのような中、サブスタンダード船とは、国際ルール、基準を満たしていない船舶のことをいいます。サブスタンダード船がそのまま運航され、また、港に入ると船の安全、船員の安全、海洋環境保護など多くの点で問題があります。例えば、航海中または入港中に油漏れが発生した場合には海洋汚染だけでなく火災等の二次災害につながることもありますし、荷役中に船の荷役設備が故障して貨物の損傷、荷役の中断、船員や作業員の怪我等につながることもあります。そんな船が自分達の国、自分達の港に入ってきたら、困りますよね?

 

したがって、寄港地のPSCOが訪船し、船の構造・設備、船員の資格証明・労働環境などにおいて基準を満たしているか書類と現場の確認をして、満たされていない場合は出港の差し止めも含めた是正を命じることがあります。

 

さて、PSCに関連する用語の一つにMOUというものがあります。

MOUとはMemorandum Of Understanding on PSCの略で、世界中の各地域において検査基準を統一したり結果を共有したりする内容で結んだ覚書のことです。現在、Paris MoU(欧州地域)、Latin American Agreement(南米地域)、Tokyo MOU(アジア太平洋地域)、Caribbean MOU(カリブ海沿岸地域)、Mediterranean MoU(地中海地域)、Indian Ocean MOU(インド洋地域)、Abuja MoU(西及び中央アフリカ地域)、Black Sea MOU(黒海地域)、Riyadh MoU(中東地域)といった世界の9つの地域でMOUが結ばれており、日本はアジア・太平洋地域を管轄する東京MOUの主要メンバー国となっています。

 

各MOUで、船会社に対する評価基準、船舶に対する評価基準が定められており、評価によって検査の間隔が異なります。

例えば東京MOUでは、船舶のリスク(判定)がLow Risk Ship、Standard Risk Ship、High Risk Shipの 3つに分類され、Standard Risk Shipと判定された船舶であれば、前回の検査実施から5ヶ月~8ヶ月経過後が次回の検査期間範囲となっており、Low Risk Shipであれば次回の検査はStandard Risk Shipよりも長いスパンで、High Risk ShipであればStandard Risk Shipよりも短いスパンで実施されます。

東京MOUのホームページでは、各船会社、各船舶の評価が公開されていますので、一度確認してみることをお勧めします。

 

TOKYO MOU

Memorandum of Understanding on Port State Control in the Asia-Pacific (tokyo-mou.org)

https://koueki-tms.or.jp/